カンさんの入社後、先述の通り工場には様々な変化が現れたが、中でも私が注目しているのは川上自身の変化だ。
これまでは職人然とした“プレーヤー”からなかなか脱却できないでいた川上だったが、ベテランの加入により多少の余裕が生じたのか、ここに来て自分なりの“工場を創る”という事に目を向けていると思われる行動が増えてきたのである。
まず、以前から私が提唱していたものの諸々のドタバタの中で完全になおざりになっていた、社員の仕事の“スコア化”が、ここに来て、川上、兼松の協議により、いよいよ導入されたのである。
このスコア化によって、一気に評価が変わったのが、以前問題視されていた“デニーさん”である。(このエピソードはvol.75を参照されたい。)
正確に言えば、評価が変わったのではなく、“正しい評価がわかった”という事だ。
これはどういう事かというと、当時工場はずっとトラブル続きでドタバタしており、それに対処すべく、”場当たり的な適材適所”で職人を割り振っていたことに起因する。
その結果、最初の職人であるヤンさんは「狭く深く」育ち、特定のセクションをある程度まで任せられる様になったが、デニーさんに関しては、逆に広範囲の仕事を点々と任せてきたため「広く浅く」育ち、実際には、マルチで”それなりにやれる”様になった事が数多くあったという事だった。
当時は”ワンセクションを任せられるか否か”だけで、仕事のできるできないを判断していた事もあり、不幸にもデニーさんは“低評価のレッテル”が貼られてしまっていたが、改めて全作業項目をスコア化してみると、デニーさんは実のところ、かなりの広範囲に渡り、ある程度ではあるが、やれる事が多かっというわけだ。
もちろん、当時の彼にまつわる問題はこうした仕事の良し悪しという単純な話でもなかったので、当時の彼を全面的に擁護するわけではないが、運営都合の配置を行なった上に、“正しい物差し”で彼を計らなかった工場運営のあり方は、厳しく言えば“大罪”であると言っても過言ではあるまい。
「仕事の良し悪し」「今の自分」が目にわかる形で“スコア化”されるというのは、雇用する側にとっても、雇用される側にとっても非常に合理的だ。
本来小さな工場であれば、管理者適性のあるマネージャーがいれば、ある程度感覚的にスタッフの一長一短を判断できるものであるが、この“感覚的”というのは、評価される側からすれば、何が評価されるのか明示されていないので、単純なマネージャーの好き嫌いという風にも取られかねないから恐ろしい。
いずれにしてもこのスコア化に関しては、工場の拡大を行っていく過程では必須な事なので、まさに新たに人を募り始めたこのタイミングの導入は、遅すぎた感は否めないものの、非常に正しい判断だ。
そして、スコア化により、当然に良い意味の“社内競合”が発生する。
会社から何が評価されるのかが明確になったのだから当然である。
また、何ができる様になれば給与が上がるのかも明確となるため、技術の習得などに対する熱意も変わり、仕事へのモチベーションも劇的に上がっていくのである。
ここで最も大事なのは、企業として公正で合理的な“正しい物差し”を持つ事と、トップの見方、つまり社員の”トップからの見られ方”一つで、社内のモチベーションや雰囲気はガラッと変わってしまうという事だ。
故に、組織のトップである川上は、その点にくれぐれも留意して仕事に臨まなければならないのである。
\ R A N K I N G /
ブログランキング参加中!
よろしければ下記2つのボタンをクリックしてください!当ブログに1票投票されます。
いいね!@人気ブログランキング > 社長ブログ【現在5位!】