先述の通り、ベトナムでのウクレレ製造は外注を基盤として続けるのではなく、最終的にはおおよそ全ての工程を内製化した自社工場に発展させなければならないし、さらに生産したウクレレをどのような手法で売っていくのか、より具体的な計画を詰める必要があった。
しかし、どういう計画を立てるにしろ、まず必要なのは“資金”と“リソース(人材)”である。工房程度ならともかく、工場ともなれば、設備投資も半端ではない。
またマーケティングにおいても、GAZZLELEのパワー(人気)は確かに素晴らしいものであったが、そこに依存するだけでは面白くないし、日本全土、世界全土には、まだまだGAZZLELEを知らない人達が大勢いる。この素晴らしいコンテンツを全世界に認知させるためには、それなりの資金が必要であると共に、それなりの仲間、“同志”が必要であると考えていた。
しかし私は、それは然程難しい話だとは思っていなかった。甘い蜜には自然に蜂が集まるように、面白い話には自然と必要な人達が集まってくるものだからである。
しかも実のところ、既に撒くべきところにはしっかりと“種”を撒き終えていたのだ。
私は、自分が関わっている様々な事業な中で、感度の良いビジネスパートナーに、“世間話”としてこのウクレレ事業の物語を話し続けていた。すると案の定というべきか、話が進むにつれて“ワクワク”は伝染し、相手側から自発的に、「何かしらの形で絡めないか?」と声を掛けられる事が多くなってきたのである。
私は、単に”こちらからお願いする”のと、”あちらから声を掛けられる”のとでは、同じ”協業”であってもまるで価値が違うと考えている。前者と後者では、モチベーションはもちろんの事だが、「当事者意識」が違うからだ。ウチの様な零細企業が、切羽詰まってはいなくとも大企業に対して資金援助などの“お願い”をすれば、たとえ聞き入れてもらったとしても、相手の出方によっては変な主従関係が発生してしまい、下手をすれば奴隷も同然の立場になりかねない。だからこそ、こちら側でもしっかり相手は選ぶし、話の持っていき方や最初のポジショニングには、細心の注意を払う必要があるのである。
そして協業が決まったのは、気心が良く知れたビジネスパートナーである「東映エージエンシー」だった。
この会社の竹内常務とは、それほど付き合いが長い訳ではないのだが妙に馬が合い、別の新規事業で苦労を共にしてきた同志でもあって、数少ない私の良き理解者の一人である。年齢は一回り以上も年上だが、私からすればある意味、信頼の置ける”兄貴分”的な存在である。
先述の通り、無理にこちらから巻き込もうとした訳では決してなかったが、ビジネスにおける嗅覚の鋭い人で、このウクレレ事業が余程琴線に触れたらしく、私がウクレレ事業の話をする度、毎度の様に意見を交わす事が多くなっていた。そのため、ある意味この協業は”成るべくして自然と成った”という印象なのである。
東映エージエンシーとのアライアンスは、もちろん資金面におけるリスクヘッジとしてもありがたい事だったが、それ以上に、GAZZLELEや後のG-Laboを世に広めるのに必要な、“我々が持っていない”様々なノウハウやコネクションを、“彼ら”が持っているという点において非常に重要な事だった。
まず東映エージエンシーは、東京ドームや幕張メッセなどの大型の会場を使った、仮面ライダーや戦隊モノ、アニメのワンピースやプリキュアなど、様々なコンテンツの大型イベントを手がけている。つまり、大型イベントの実現に必要な全てを知っているのである。
我々も故あって、いずれそうした大型イベントを冠を取る形でやってみたいと考えていたので、必要なノウハウを漏れ無く得られるのは単純にありがたい。
また、テレビ関連のコネクションも非常に強い。いずれ書こうと思うのでここでは詳細を省くが、私は、GAZZLELEのコンテンツはいわゆる既存のウクレレ業界だけに留まるものではなく、世間に知られれば知られるほど、指数関数的にファンが激増するコンテンツだと考えている。また、そもそもこの素晴らしいコンテンツが一刻も早く世界に広く広まるべきだとも考えているのだ。
そのため、現在のYoutube上での活動に加え、テレビやその他のメディアにもどんどん積極的に活動を露出し、“誰もが当たり前に知っている”というレベルに認知を進めるべきだと考えている。
平たく言えば、「普通に世間に知られれば、絶対に“恐ろしくバズる”」という事なのだ。
そのメディア戦略を遂行するにあたって、専門とも言える東映エージエンシーとの協業は、まさに最適だと考えていたのだ。
そしてこの協業を起点に、竹内常務もまた、この後巻き起こるG-Laboを取り巻く様々な出来事に、見事に巻き込まれていく事になるのである。
次回、「遂にG-Labo誕生!川上、ガズさんに命名される!」に続く。
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