ベトナムツアー時に視察した“あの物件”は、徐々に工場としての体を成し始めていた。
床にはコンクリートが打たれ、オーナーが作ると言っていた部屋の骨組みがなされており、天井には換気のためのファンがいくつか設置され、既にクルクルと回っていた。
中古の資材が使われており、お世辞にも綺麗な工場とは言えない。
しかし、何故なのかわからないが、不思議と“粗雑な中”に“妙なワクワク感”と“ある種の自由”を感じてしまう。
ふと、この”新設なのにボロい工場”こそ、我々に相応しいのではないかと思えてきた。
突然だが、皆さんは「バトル・オブ・シリコンバレー」という映画をご存知だろうか?
AppleやMicrosoftの創設を描いた映画であるが、パーソナルコンピューター創生期のスティーブ・ジョブズやビル・ゲイツの覇権争いの様子がかなり生々しく描写されており、ジョブズの没後に製作された「Steve Jobs」よりもはるかに面白いと私は思っている。
物語の詳細を語ると長くなるので割愛するが、ジョブズとウォズニアックらが作った世界初の木製パーソナルコンピューターは、“見すぼらしいガレージ”から生み出され、今日の家庭用PCの礎を見事に創り上げた。
言いたいのは、“GAFA”(Google・Amazon・Facebook・Apple)に代表される近代を代表するIT企業の多くは“小さなガレージ”から始まり、そこから紛れもなく“世界を変えた”という事だ。
そして、我々のウクレレソリューションもまた世界を目指す“ベンチャーソリューション”なのである。
今の身の丈にあった“ボロい工場”からスタートし、世界中に“新しいウクレレ文化”を創造するというのは、ある意味とてもベンチャースピリッツを掻き立てられるシチュエーションとも思えるのだ。
余談だが、Appleで最初に発売された木製PCである「Apple1」は、去年(2019年)、e-bayで1億8000万円という驚くべき高額で売りに出された事がニュースとなった。
生産台数はわずか200台で、現在まともに稼働できるものは、その内のおおよそ50〜60台と言われており、まさにマニア垂涎のレア物なのである。
もしかしたら、G-Laboの初期モデルも、いつか世界のどこかのオークションで物凄い値がつくかもしれないなどと、ついつい下らない妄想をしてしまうのだ。
話は戻るが、同行していた竹内さんも、この“新設でありながらボロい”この工場の視察の直後、私同様に何かを感じたようで、「ここが良いんじゃない?」と言っていた。
加えて、彼の場合は、工場の目の前にあるカフェのコーヒーをいたく気に入っていた様なので、以降の工場訪問の際に、そこでゆっくり寛げる事もちゃっかりイメージしていたのかもしれない。
また、もう一つ思う事として、ロンハウ工業団地は近代的で確かに素晴らしかったが、地域に密着したある種の“泥臭い地元感”はなく、それはそれで、“折角の”ベトナム工場なのに少し寂しく感じてしまうところもあったのである。
そういうわけで、最初の直感に従い、我々は“新設なのにボロい工場”を新たな拠点とする事に決めた。
我々は、元々オーナーが施工を予定していたオフィススペースに加え、我々の計画するウクレレ製造に必要となるその他の部屋もオーナーに依頼する事にした。
そして、兼松の交渉の甲斐もあり、お値打ちな物件が“更にお値打ちな条件”で借りられる事となった。
しかし、依然として心配が残るのも事実だ。
どこまで我々の想像通りの工場に仕上がる事ができるのか?これが目下の心配事となったのである。
そして、その心配は後に“思いもよらぬ形”で姿を現す事になるのだ。
次回
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