テト休みが明け、新工場で作業が再開された。とても暑い事には変わりないのだが、スポットクーラーと業務用の扇風機で何とか耐えしのぐ形での再開となった。
またしても大変苦しい事態だが、個室が出来るまでのいま暫くの我慢である。
“ところが”だ。
“唯一の希望”であった個室の増築に、またしても“大きな問題”が発生する事となる。
実は個室の増築に掛かるコストを削減するために、川上とオーナーとの折衝の末、壁面を石膏ボードにはせず、“ベニアの間仕切り”という仕様にして工事が進められていたのだが、個室完成後、あまりの湿度の高さからベニアが変形してしまい、”壁が歪んでしまう”という事態が起こってしまったのである。
この事態が発覚した瞬間、これまで懸命に作業を続けていた川上が完全に我慢の限度を越えて遂に“ブチ切れ”た。
川上はオーナーに猛烈なる抗議を行った。その怒りは簡単に収まらず、ベニアの壁を殴りつけて、とにかく猛烈な勢いで抗議した。
そして、事態は収拾のつかない状況に陥ってしまったのだ。
川上の怒る気持ちも良くわかる。確かにこの新工場の建築は、お世辞にも良いものとは言えず、日本人的価値観で言えば、完全に“欠陥建築”であると言わざるを得ない。“熱の問題”に加え、他にも随所で“いい加減な施工”の跡が見受けられていたのだ。
それらをギリギリの精神状態で我慢し続け、その中で懸命に作業を続けていた川上が“ブチ切れる”というのは、もちろん全く褒められる事ではないが、責めることはできない。
しかし、“ブチ切れる”という一方的な行為自体は、断じて“間違い”である。
誤解が無いように伝えておくが、そもそも川上は断じて“ブチ切れる様なキャラ”ではない。
会ったことがある方はご存知だと思うが、本来は本当に温厚で優しく、とても柔らかい印象の“好青年”なのである。
今回の事件は、かなりのギリギリまで追い詰められた結果生じた、あくまで特異な条件下で起こったと言える、極めてイレギュラーなケースなのだ。
しかし、そうだとしても、彼は“工場の長”である。
それは内部だけでなく、外部に対してもだ。
以前にも書いたが、ベトナムのローカルでの工場運営というのは、我々にとっては“アウェー”だ。
今後の地元での活動を見据えた行動を心がける事は必須なのである。
つまり、内外問わず、“人間関係のバランス”こそが最も重要なのだ。
もちろん、“アウェー”だからといって媚びる必要は一切ない。ノーなものは断じてノーだ。
しかし、怒ってまともな折衝ができなくなる様では当然にダメだ。
言うまでもなく、あくまで、理性的な“話し合い”こそが、唯一問題を整然とさせる方法なのである。
もちろん、相手が一方的に理不尽で感情的な応対しかできないと言うのならば話は別だが、そうでない限りは、どこまでも、あくまで、“理路整然な言葉”で返すべきなのである。
また、我々の常識は、当然にあちら側の常識ではない。オーナーの施工も、我々的には“完全にアウト”だが、どローカルなこのエリアのローカル向け工事では、もしかしたら“まかり通っていた”可能性もゼロではないのである。
もちろん、こうした当たり前の理屈も、普段の冷静な川上ならば、言うまでもなく理解していただろう。
それほどまでに劣悪な環境に耐え忍んでいた上での話なので、やはり責められないし、この一件は、そんな彼をフォロー仕切れなかった“上司”である私の責任も大きいのだ。
その点、重く受け止め、とても反省している。
とはいえ、ここは適切な仕切り直しが必要なため、兼松にオーナーとの間に入ってもらい、費用が多少掛かっても、必要な施工で再度のやり直しをお願いする事にした。
そして、ようやく“快適な個室”が完成したのである。
今度の施工は、前回とは打って変わってかなりしっかりしたものだった。それが事前の打合せでの擦り合わせによる成果なのか、川上が怒った結果なのかは定かではないが。
いずれにしても、ここからがいよいよ新工場の“本当のスタート”となるのである。
次回
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