本物件を案内してくれたのは、今にも生まれそうと言わんばかりの大きなお腹をした妊婦さんで“オーナーの妹”という事だったが、目の前にある茅葺き屋根のカフェまでお兄さん(オーナー自身)が来て説明してくれるとの事で、我々はそのカフェで打ち合わせをする事となった。
余談だが、ここのコーヒーはメニューも豊富にあり、なかなかに美味しかった。もしも、この物件に決める事になれば、打合せの際などは、このカフェを使ったり、目の前からのデリバリーであれば、非常に便利だろうと思ったりもしたが、そもそも工場がアレではどうにもならない。
そして、しばらくして“お兄さん”がやって来た。オーナーは一見すると、お兄さん??っと思ってしまうくらい、見るからに妹さんよりも年上で、私から見ても一回りは違うであろう風格を漂わせており、想像よりも“やや強面”な人物だった。
しかし喋ってみると、見た目ほどの厳つさはなく、物腰もどちらかと言えば穏やかな感じで好感が持てる人物であったので少し安心した。
オーナーの話によれば、オーナー自身が工場の建設を行う業者のようで、施工はこれから取り掛かるのだと言う。
しかし、ここでいきなりオーナーから驚くべき発言が飛び出した。
にわかに信じられない話だったが、オーナーいわく、“2週間ほど”で建物が完成するというのだ。
これは胡散臭いと率直に思ったわけだが、オーナーは自信満々というか、さも当たり前にできるといった感じで話をするので、とりあえず、条件面などの質問事項について最後まで話を続ける事とした。
どんな物件が出来上がるのかは別として、条件は廻った物件の中では一番良かった。
まず面積が広く、何と500㎡もある。さらに、オーナー自身が建築を担うという事で、内装の間取りなどもある程度無料でやってくれるという事だった。
ある程度とは、元々この工場内に事務所スペースを設ける予定だったらしいのだが、それに加え、作業が行える個室も一室無償で作ってくれるという事だった。
これは正直嬉しい話であった。というのも、ウクレレの製造工程の中のいくつかのセクションでは、塗装ブースや仕上げ室などの個室が必要となるからだ。
オーナー自身が内装建築ができるという事なら、加えて他の個室についても安くやってもらえるかもしれない。
さらに、床はその時点では土間というか砂利引きであったのだが、それもコンクリートを打ってくれるという話であった。
また、トイレもこちらの要望に合わせて男女別のものを用意してくれると言うのである。
そして、入り口付近に管理人室というか小屋があるのだが、ここには管理人が住んでおり、夜間の管理を行っているので、セキュリティも問題ないと言う事だった。
最後に気になる家賃だが、我々の予算内であるばかりか、巡った物件の中では最もお値打ちだったのである。
そんな感じで、“どういうクオリティの工場”ができるのかはともかく、条件面だけを見れば、かなり“美味しい話”だったわけである。
とはいえ、絵に描いた餅はどんなに美味しそうに見えても食えなくては意味がない。
そういうわけで、我々は一先ずこの時点ではこの物件を保留として、“二週間で竣工する”という本工事の行く末を経過観測して決める事としたのである。
ただ、この物件について二つ言っておきたい事がある。
一つはこの物件のエリアに足を踏み入れた時、物件を見る前から何となく直感的にここで工場を開くという予感がしたという事である。
おそらく、喧騒から離れた落ち着いた雰囲気がGAZZLELE的というか、G-Labo的にしっくり来たのかもしれない。
またもう一つ、工場から目視できる範囲に、このエリアではおそらく唯一であろう、立派そうな高層マンションが見えるのだ。
多少距離はあるが、十分に歩いて行ける範囲なのである。私があのマンションから工場へ通う川上の姿を想像した事は言うまでもない。
\ R A N K I N G /
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