本ツアーの最終イベントであったガズさんによる“スペシャルな合同レッスン”も大好評にて幕を閉じ、我々はこのツアーにおける“最後の晩餐”へと向かう事にした。
ツアー最後のディナーは”フレンチ”である。
フレンチと言っても、いわゆる高級レストランで食べるような仰々しいものではなく、カジュアルなビストロといった感じのちょっと“隠れ家的なお店”だ。
今回のレストラン「Ty Coz Saigon(ティ コス サイゴン)」も、もちろんなかなかに私のお気に入りなのである。
余談だが、このレストランとの出会いには少し面白いエピソードがある。
私がTy Coz Saigonを訪れたのは、10年ほど前、私が仕事でベトナムに行き始めた頃、まだ自動翻訳が無い時代のトリップアドバイザーの英語記事で見つけたのがきっかけだった。
フランス統治時代の趣が残る、目下「東洋のパリ」と謳われるここホーチミンで、是非“アジアの本場”たるフレンチを食べてみたいと思ったのである。
このレストランはパスター通りというお洒落目な通りから“ヘム”と呼ばれる小道に一本入ったところにあるのだが、まずその“出で立ち”がどう考えても怪しいのだ。
というのも、一見すると、どう見ても“廃墟のようなビル”の中にあるのである。
初めて訪れた時、あまりの建物の薄暗さに、本当にここにレストランがあるのか?と真剣に疑ったものである。
入り口に入っても人の気配がなく、目に飛び込んでくるのは古びた階段だけで、上を覗き込んでも人の気配が全くない。
しかし、住所は確かにここで間違いなかったので、とりあえず上がってみると、確かに2階にはレストランらしきスペースがあった。しかし、そこにも微灯がついているだけで、何故か誰もいないのである。
もしや今日はお休みなのでは?と思ったその瞬間、さらに上の階からかすかに、皿のカチャカチャという音が聞こえてきた。
空耳ではなく、確かに聞こえたのだ。そこで、さらに階段を登ってみると、何と屋上にて密かにレストランが開かれていたのである。
店員に案内されるままテーブルにつくと、太っちょのオーナーらしきフランス人がデカい黒板のメニューを持ってきて、たどたどしい英語で懸命にメニューの説明をしてくれた。
面白いのが、このメニューのルールだ。前菜、主菜、デザートなどを順番に選んでいくのだが、最終的に主菜の横に書いてある金額がコース料金となる仕組みとなっている。このコース料金が、驚くほどお値打ちなのだ。日本円にして何と2000円以下から食べる事ができるのである。
ただ、一つ問題なのは、オーナーシェフのPhilippeさんの説明が異常なまでに長いという事だ。
今でこそ、ある程度のメニューを把握しているから良いが、黒板に書かれたフランス語のメニューを延々と英語で説明されると、あまりに説明が長く、どれがどれだかとても覚えていられないのである。
放っておくと普通に20〜30分は説明が続いてしまうのだ。何度訪れても、これだけは“避けようのない不変的な儀式”なのである。
しかし、ここの料理はなかなかどうして美味しいのだ。特に鴨のコンフィやラムのソテーなどは“一食の価値あり“である。
しかし、残念な事にこの日のディナーは雨のため、開放的な屋上は使えず、二階の屋内となった。
そして、“不変的な儀式”と謳っておきながら、いきなり覆してしまい恐縮だが、名物オーナーのPhilippeさんではなく、奥さんかと思われる年配の女性がメニューの説明をしてくれた。
十分に丁寧で長い説明なのだが、Philippeさんほど長くなかったのが少し残念だ。
しかし、料理はいつも通りのクオリティーで一先ず安心したのである。
この最後の晩餐では、ガズさん、川上から、本イベントの参加者へ“心からの感謝の言葉”が伝えらえれた。
そして、私からも心よりの感謝を込めて、最後のご挨拶をさせて頂いた。
私にとって、この最後の晩餐はとても感慨深いものになった。
手探りで始めたベトナムでの新規事業に、ようやく日本からの“初めてのお客様”をご招待できたからである。
また、参加者全員が素晴らしいお客様であり、この最後の晩餐で、その大変満足そうな笑顔が見れた時、これまで水面下にあった様々なトラブルも、全てはこの一瞬のための通過儀礼だったと素直に思えたのである。
そして、“川上工房”としては、これが最初で最後の日本からのお客様となってしまうわけだが、次回は何倍にもバージョンアップされた“新設工場”を、新たな日本のお客様と共に是非ご案内させていただきたいと切に願ったのである。
\ R A N K I N G /
ブログランキング参加中!
よろしければ下記2つのボタンをクリックしてください!当ブログに1票投票されます。