これまでの僅か半年間余りの中で、5名雇ったスタッフの内既に2名が退職しているという状況は、はっきり言って、私のこれまでの経営経験の中でもかなり異常な事態だった。
ベトナムにおいてもそれは同様で、ベトナムのIT事業部では、設立からのスタッフ達が未だに健在で、離職率の高いベトナムにおいても他社と比しても離職者が少ないというのが自慢の一つだ。
加えて、当時社会人としても全くの未経験だった人材が、まさに“人財”として成長し、今や堂々と要となる重要な仕事を担って活躍している。
これは、駐在事務所長である兼松が、そうなる環境を創ったという事に他ならない。
ここで大切なのは、そのIT事業部のスタッフ達が初めから “完成された優秀さ”を持っていたのかどうかという事であるが、もちろん、素養としては優秀だったかもしれないが、エンジニアも通訳も、新卒や未経験者からの採用が多く、決して“出来合い”で形成された組織ではなかった。
つまり、そこには“人材を人財へと育てる環境”があったという事なのである。
では、同じベトナムにあるIT事業部とウクレレ工場では一体何が違うのかという事であるが、細かくは色々あるのだが、まず第一に挙げられるのは、組織全体が意図的に共有すべき、明確な「価値観」や「雰囲気」があるかないかである。
2人以上の人間がそこにいれば、自然とコミュニティが形成されるというのは当然の摂理である。
しかし、会社組織となれば、自然と出来上がったコミュニティではダメだ。
まずは、「どういう価値観を持った」「どういう雰囲気の」組織であるべきなのかを、トップがしっかりと他の者に共有しなければならない。
と言ってしまうと、まるで社則や十訓のような“ガチガチのルール”を作るべきだ言っている風に思われてしまうかもしれないが、そういう意味ではない。
もちろんルールを作る事は大切だが、真に難しいのは「ルールを自然と守らせるための価値観を作る事」だ。
だから私が言いたいのは、その「価値観」こそ、トップがイメージを持って社員にしっかり伝えるべきものなのだという事である。
そしてそれは、言葉によってではなく、言うなれば“仕事(環境)で語るべき”であると。
これは、ある種の緊張感のような、職場に漂う”空気”の事である。
例えば、しばしば遅刻するスタッフが職場にいた場合、そのスタッフに「遅刻をするな!」とド正論で説教をしても、まず簡単に改善される事はないだろう。
また、そうした職場は往々にして、整理整頓や仕事の進捗管理、顧客対応の質など、他にも様々な問題を抱えている事も多い。
変わって、一定のレベルで緊張感のある職場では、いちいち「遅刻はダメだ!」などと程度の低い釘を刺さずとも、遅刻の常習犯などまずいないものだ。
極端な話をすれば、もの凄く厳しい先輩がいる体育会系の部活動や、一世一代の就活の面接でいつも遅刻してしまうという事など、余程非常識か、あるいは特殊な理由がない限り、まずあり得ない。
何故なら、そうした場には、“遅刻はダメ”だという環境(価値観)が前提として存在しているからだ。
言い換えれば、職場に遅刻を常習で犯すスタッフがいるという事は、そこに遅刻が許されるゆるい雰囲気(環境)があるからだと言うことに他ならない。
そしてこれはその他の仕事に関するルールを徹底しようとする時も同様で、今回のデニーさんに関する話も、もちろんこれと同様の部分がある。
いかに川上に対して反発があろうとも、ルールを無視してやり方を勝手に変更する事や、川上に対して不遜な態度をとる事が”許される環境がある”事がそもそも問題なのだ。
ちなみに、例えば遅刻をすれば減俸にするとか、ルールに反したら何らかの罰則を与えるというのは、手段として不適切とまでは言わないが、私が望むところではない。
そもそも、そんな程度の低い事をわざわざ罰則で縛らないといけない環境であるという方が余程みっともなくて恥ずかしい事であると私は考えているし、そんな事を真顔でやらなければならないような職場からは、当たり前だが、良いモノが作られたり、良いサービスが生まれるとは到底思えないからだ。
ともあれ、まずそうした環境の変化、改善が必要である、という事が、私が川上との話合いの中で彼にまず最初に伝えた事であった。
そして、話は具体的な解決策へと進んで行く。
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