企業の中にある様々な問題は大抵の場合は“枝葉”の事で、実のところ、幹は一つである事がほとんどだ。
何の話かと言えば、もちろんG-Labo工場の話である。
三つある“川上にしかできなかった作業”という関門の一つ目は、ベトナム人スタッフの習熟と、淡路の言葉によって動き始めた川上のリカバリー、そして兼松によるタスクの最適化により、今回は全体の予定が遅れる様な事態にまでは陥る事なくクリアする事ができたのだが、それは決して、周囲(関係者一同)が熱望するところである”本質的な問題の解決”には繋がっていない、と私は評価していた。
より正確に言うならば、“本質的な解決”に向かっているのかもしれないが、それは私的には、あくまで“現時点における”という限定付きであって、“苦肉のプランB”への道であったと言えるかもしれない。
この時点から既に断言できた事だが、“川上にしかできなかった作業”における“三つの関門”の残り二つで、必ずG-Labo工場は再び苦戦を強いられる事になると私は思っていた。
何故なら、第一関門のクリアというのは、問題のある“枝葉の一部”を取り敢えず切り落としたに過ぎず、幹や根っこという、文字通り“根幹”からかかってしまっている“大きな疾患”には、何らメスが入れられていないからだ。
とはいえ、どういう状況であったとしても、目の前に問題や課題が立ちはだかる以上は、苦労はするだろうが、それを容赦なく突破していくだけだ。
残りの関門に関しても、実際に苦労する現場からしてみれば不謹慎な物言いに思われるかもしれないが、単純にそれらをクリアする事自体は特に難しい事ではないと私は考えていた。
ただ、「どうクリアするか」によって、今後の“工場の在り方”や、その“方向性”が決まってくるものだと実感していた。
第一関門のクリアにより得た最もポジティブな情報は、新たにチームに加わった“3人のベテラン職人”が“十分な戦力”となったという事だ。
元々技術的には言う事はないだろうし、実際、初戦から戦力として十分以上のパフォーマンスを見せてくれたのである。
今後、工場にさらに馴染めば、より精度の高い仕事と、今以上の大幅な生産性のアップが見込める事は間違いないだろう。
また、彼らに対する課題が明確となった事もまた、収穫と言えるだろう。
それは、我々が求める“品質”に対する理解だ。
これは、今回のタームでの仕事においては、品質に対する感覚の差異によりその指導や修正にある程度の時間を要してしまったが、そこで得た基準はマニュアル化され、次回のタームでは、必ずや更なる精度の向上が認められるだろう。
そして最も重要なのは、彼らの登場により、今後の生産ラインの原型、そして企業として求められる指揮系統の基礎が確立したという事だ。
これにより、ベトナム人職人の中で、明確な“技術差による序列”と“師弟の関係”が芽生える事となった。
若手職人の二人からすれば、適時教えを請える相手が見つかったということで、改めてポジティブな気持ちで職人の道を歩み始める事が出来た様にも見受けられる。
それ自体、とても良い事だし、それは、工場における”教育体制の基礎”が出来上がった事に他なならない。
つまり、川上不調というイレギュラーな経験を経て、皮肉にも工場の新たな組織体制の原型が確立し始めたというわけだ。
「ピンチをチャンスに変える。」というのは、古来より経営者達の中では使い古されてきた考え方だ。
もちろん私もピンチに陥る度に、そう思うだけでなく、今風な言い方をするのであれば「倍返し」で巻き返したいと思ってきた。
しかし、今回の「災い転じて福となす」「怪我の功名」的な流れは、私にとっては、決してスカッとするものではなかった。
その理由は言うまでもなく、川上がそのような“ピンチの流れ”から転じた“ポジティブな流れ”の中心には、ほぼ存在していなかったからだ。
それこそが、私にとって、この第一関門クリアにおける、唯一にして、最大のネガティブな事柄なのだ。
もっとも、それはあくまで“工場の幹が川上である”という前提で考えればの話ではあるのだが。
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