ここで、中長期にわたる改善計画の話題に突入していく。
なお、先述の短期プランの話において、「増員プラン」に加えて、「人海戦術」のプランもあるという話をしていたが、これは説明を忘れているのではなく、「中長期プラン」と密接に関わっているため、ここから先に合わせてお話しさせていただこうと思っている。
まず、中長期にわたる改善計画を検討するにあたっては、とにかくボトルネックである「川上にしかできない作業」の発生要因を明確にしなければならない。
「川上にしかできない作業」というのは、言い方を変えれば、川上がその作業を「任せられる職人がいない」作業という事だ。
ここで重要なのは、「何故任せられないのか?」という事である。
重要と言っておきながら当たり前の回答で恐縮だが、それは単純に、任せる相手に、その作業に足るだけの「技術力が不足している」からだ。
では、何故その技術力を上げるための教育が進まないのか?という事になるのだが、これには二つ原因がある。
一つは言わずもがな、「時間」の問題だ。
これは単純に、納期を追いかける中で、もっぱら教育に割く時間が足らないというのもあるのだが、それよりも、実践の中で教育を施した際に発生する「ミスの補填」が非常に大変だという事が大きい。
以前にも話したが、”失敗部分を直す”という作業自体がプラスの手間な上に、万が一「致命的に直せないミス」があれば、それまで積みあげてきた工程の努力が全てパーになってしまうのだ。
その場合、また一からのやり直しとなってしまう。
故に、”教えたくても教えられない”というジレンマがあるというわけだ。
だが、それだけではないと私は思っている。
それこそが二つ目の原因なのであるが、”川上のマインド”にも、少なからず問題はあるものと思っている。
とは言え、本人は”納期必達”を目指すため、今自分にできる事を全力でやっている。
少なくとも現時点では、彼ばかりを責められる様な事では決してないし、実際のところ彼のこの状況は、”川上を取り巻く環境”にも大きく起因しているものだと私は考えている。
なお、この”教育が進まない”問題を分析する際に大きなポイントとなるのは、スタッフに作業を任せようとした時に、その作業が「できない」というのは、”一体「どのレベルで」できないのか”という事である。
ここでは私にこの問題を強く印象付けた、ある出来事について話そうと思う。
ある時、ボトルネックの一つに挙がっている「ネックの成型」の作業を、川上の教育の下、ヤンさんに実践させた事があった。
ヤンさんが作ったネック10本の内、成功したのは、最初に“出来上がった”たった1本だけ。残りの9本は失敗に終わった。
おまけに、1本ネックを仕上げるのに川上の3倍もの時間がかかってしまったという事だ。
その失敗を受けて以降、川上はその作業を自分でだけ行う事にしているという。
もちろん、その当時は納期が差し迫る中、仕方の無い判断であったというのは理解できる。
状況を考えれば、決して間違いだったとは言い切れない。
しかし、今回の課題解決において、この話の中で見るべき最も重要な数字は、失敗の「9」ではなく、成功の「1」である。
成功が「0」ではなく、「1」であった事だ。
これこそが、課題解決の「最大の糸口」なのだ。
これは、“失敗のリスクを極力減らせる事さえできれば”、現段階の技術力でも、川上の3分の1程度の生産力が手に入る可能性があるという事を意味するのだ。
そしてもちろん、言うまでもなく、人は成長する。
繰り返す事が出来れば、時間も当然に短縮されるだろうし、クオリティも今よりは間違いなく高まるだろう。
これが、もしも成功「0」であったのならば、そもそも「教えても全く無駄な可能性」も考慮しなければならなかっただろう。
それに比べれば、遥かにマシというわけだ。
そうなると次は”いかに失敗の数を極限まで減らすのか?”という問題になるのだが、これは逆に考えれば、「何故10本作るまで9本の失敗に気づかなかったのか?」という事でもある。
結論から言えば、こまめな検品ができなかったからだ。
例えば3本に1本や、究極的には1本ずつ検品すれば、良かっただけなのである。
しかし、先に述べた通り、これは”川上を取り巻く環境”の問題の影響がかなり大きいと私は思っている。
そして、その問題こそが、本課題を解決するのに最重要な問題であると言っても過言ではないのである。
次回
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