淡路、兼松、ガズさん、そして私の4人でのミーティングは、まずはそれぞれの立場から現状の課題についてどう認識しているかを確認し、それらを取りまとめて「会社としての認識」として一本化することから始まった。
細々と様々な課題が挙げられたものの、想定通り、先述した「クリティカルパス」に関する課題、つまり「川上にしかできない作業を今後どの様に処理するのか?」という課題に結局は集約された。
それこそが工場が真っ先にクリアすべき課題であり、それが解決できなければ、結局のところ、個々にどう頑張ろうともこの先一歩も先に進む事が出来ないという事を、改めて確認した感じであった。
その上で、会社として問題解決にあたっていくための基本的な価値観について、擦り合わせを行った。
これは、端的に言えば、川上個人の作業のプライオリティ(優先順位)の設定や教育方法の改善といった、個人を単位にした解決方法ではもはやどうこうできる状況ではないという事だ。
根本的に全体の仕組みから見直す必要がある局面なのである。
もちろん、川上のマンパワーも”これまでとは違った形”で必要とはなるが、窮地の川上を救うためには、兼松、淡路をはじめとする周囲のスタッフが「それぞれの役割」を担い、積極的に協力し合わなければ、全体の改善には決して繋がらない。
その考え方を、まずは皆で確認した。
そして、改善に向けた具体的な体制としては、スケジュールの作成や指示(指揮)、在庫の管理など、生産管理の全般は兼松が、職人への技術指導や作業の管理、品質の管理は川上が、そしてその二人を繋ぐブリッジ役を淡路が担うという事で取りまとめ、改めてその指示を出した。
何を今更と思われるかもしれないが、これには理由がある。
まず生産管理だが、これまでも基本となるスケジュールの作成は兼松が担っていたのだが、現場で度々発生するトラブルの度に狂ってしまうスケジュールの最適なリスケを行うために必要な、現場側と管理側との情報のやり取りが上手くいっておらず、全体が把握しきれないという非常に危険な状況が続いていた。
現場側と管理側のやり取りが上手くいっていないということは、つまり、これまでのトラブル対処は、タスクの全体を俯瞰した上でのトラブル対処ではなく、トラブルが起こった箇所に川上が現場判断で「神風特攻」していくという力技の対処であったということだ。
都度全力で解決にあたってはいたものの、全体を見据えて、予定を立てて挑んだものではなかったため、確かに1歩ずつ前には進んでいくものの、具体的なスケジュールの把握は困難であったのだ。
川上もこのやり方ではダメだと言う事はわかってはいただろうが、”それでもやらざるを得ない”という状況に追い込まれていたのだろうとは思う。
しかし、至極当たり前な話だが、全てのタスクを俯瞰することができてさえいれば、そのトラブルが起こったタスクそのものは遅れるかもしれないが、それに伴って全体がまるごと連動して遅れるほどの事態には陥らないやり方があり得たのではないかと、私は考えている。
兼松もそれは良く理解していたが、管理側として、川上を長とする現場側のやり方を尊重した結果、踏み込んだ指示まではできていなかったといった感じだったのだろう。
とはいえ、そのやり方では、現にこの悲惨な有様となってしまうわけで、もう下らない気遣いをしている場合ではない。
しかしながら、今そんな説諭に時間をかけて、いちいち全体を宥めすかす様な時間はないのも事実だ。
故に、仮に横の繋がりで角が立つのであれば、問答無用で強権に、トップダウンで改めて明確な役割を指される方が、当事者達の中でも素直に納得できるだろうと考えたわけだ。
もっとも、全員が共通の危機感を持っている今、その様な些末な事にいちいちハレーションを起こす様な者は、後に本件を伝えた川上も含めて、一人としていなかったわけであるが。
そして、具体的な解決方法の話に進む前に、この役割分担で非常に重要な役割を担う者こそ、今や新入社員となったばかりの「淡路」なので、その役割についても言及しておきたい。
余談だが、最近、淡路くんから淡路と呼び捨てで書き始めたのは、彼がインターンから社員となり、正式に同志として認めているからだと書き加えておこう。
次回
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