“フレッシュコンビ”によるお使いミッションは、“結果的には”上手く達成する事ができた。
有望な“3D CNC作業”の外注先候補が見つかり、サンプルの製作の依頼ができたのだ。
ただ、私の滞在期間中では、残念ながら業者とのアポ調整が上手く行かなかったので、実際にミッション達成となったのは私の帰国後間も無くしてからだった。
結果として有望な外注先候補が見つかったわけだが、このミッションの最中から、私には気になって仕方がない事が一つあった。
それは通訳の“リンさんの仕事”についてである。
簡単に言えば、彼は「とても返事が良く、質問が少ない」。
一見すると、とても良い事のように思われるかもしれないが、実はこれは“非常に危険”だ。
本当に主旨を理解して仕事を進めているのであれば全く問題はないのだが、そうではないという事は、私との滞在期間内での僅かな接点からも、ある種の“違和感”として、明らかに読み取れていた。
通訳とは、極めて高い精度が求められる、一種の”伝言ゲーム”だ。
伝言を受けた初めの一人が“トンチンカンな理解”では、当然に悲惨なゲームの結末が待ち受けている事は容易に想像できるであろう。
ただし、ゲームと決定的に違う事がある。“常に徹底的に質問ができる”という事だ。
つまり、解るまで聞きまくれば良いのである。
つまり、この“徹底的に解ろうとする姿勢”こそが、私が通訳に対して求める最も重要な素養なのだ。
また、私は“質問が通訳を育てる”と言っても過言でないと考えている。
そもそも通訳とは、あくまで“言語のスペシャリスト”であって、最初から他の業種のエキスパートを兼任している事はまずない。
例えば、IT専門通訳とか〇〇専門通訳とかいうのは、全て“職業経験”による“後付け”と言っても良いだろう。
例えば、IT用語をどれだけ本で覚えて来たとしても、当然にいきなり開発現場で活かせるかと言われれば、現場独自の言葉のルールや慣習もある中で、なかなか即戦力というのは難しいのだ。
現場の人間と言葉を交わし続ける事、質問し続ける事で初めて、仕事として使える本物のプロ通訳として昇華されていく。
つまり、質問をしないという事は、通訳者本人の“成長を自らで妨げてしまう姿勢”であると言っても過言ではないのだ。
例えば、前任のアンさんは、入社当時はITに関しては、一切の理解がなかった。そして、ウクレレ製作についても当然に全く知るところではなかった。
しかし、川上や兼松の通訳を行う中で、わからない事はどんな小さな事でも確認し、常に自身をバージョンアップし続けたのである。
無論、このウクレレ事業のために私がホーチミンに訪れた際も同様で、その都度、私自身も少々クドいと思えるくらいの量の質問を受けていた。
その結果として、彼女から退職の願いが出された時、誰よりも川上が彼女のいなくなる今後の職場に対して強い不安を抱いた程、通訳として成長を遂げていたのである。
またもう一点、リンさんの仕事で気になった事があった。
これも根本的には同じ幹にある問題と言えるが、“自発的な進捗の報告”がないという事だ。
どうやら、最初の業者のリストアップの段階から上手く行っていなかったようだが、進んでいない事の報告がなかったため、リテイクまでに余計な時間をロスしてしまった。
結局は、ユさんの調べたリストを元にアポ取りしてもらったので良かったのだが、こういう小さなロスも積もり重なれば、かなりの大損害となる。
私は滞在期間中に、この“リンさんの仕事”について、「いずれ必ず問題となる」と兼松にフィードバックを入れて注意を促していたが、この問題は、後に予想通りの悪い結末を迎える事となる。
ちなみにコンビの片割れである淡路くんだが、彼は想像通りの働きと言っても良いという感じで、今回のミッション達成は、彼が物怖じせず、図々しく業者に切り込めたところが大きかったと私は分析している。
普段現地の業者しか相手にしていない様な“どローカルな業者”とやり合うには、彼の様な“逞しい図々しさ”は本当に強力な武器と言えるのだ。
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