“重大な問題”が内在していた工場ではあったが、それでも、現場では現場なりの弛まぬ改善が進められていた。
少しでも生産性を上げるために作業場のレイアウトを最適化したり、教育方法についてもあの手この手と色々なチャレンジがなされていった。
これらは主に川上と、その奥さんであるユさんの試行錯誤と努力による改善であったが、こうした取り組みは間違いなく、工場の前進に繋がっていた。
そうした報告を受ける中、私が特に注目したのは、“塗装職人のロンさん”の存在だ。
彼は元々トムさんの工場の外注先という事で知り合ったのだが、結構な年配で、今後は後進を育てたいという彼の意向と、一人でも多くの手練れが欲しいという我々の意向が合致し、三月から正式に社員として働いてもらう事となっていたのである。
川上が絶賛するほどの”塗装技術”の持ち主であったのに加え、数十年楽器の塗装を経験してきた事もあって、それに関連する”木工”もかなりの高いレベルで扱えるのだ。
また、楽器製作に絡んだ木材の調達先や作業の外注先の情報についても当然に明るい。そして、何よりも後進を育てたいという彼の意向通り、非常に“教えるのが上手”なのである。
私が彼に注目した理由は、一言で言うならば“安定感”だ。
若輩揃いの川上工場の中で、彼のような“安定した存在”は非常に貴重なのだ。
彼に任せた塗装という一角だけは、常に非常に安定しており、これまでドタバタに見舞われ続け、殺伐とした工場において唯一安心できるオアシスの様なセクションに思えたのである。
もしもこの工場に“彼の様な存在”がもっと増えれば、どうなるだろうか?
川上は本来の力を遺憾なく発揮でき、今よりもっと自由に高く羽ばたけるのではないか?
私はそう思わずにはいられなかったのだ。
\ R A N K I N G /
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